プロジェクトストーリー

電気自動車になった日産の軽
- 新型SAKURA開発秘話 -


「日産SAKURA」は、100%電気で走るまったく新しい軽の電気自動車。
これまでの技術力を結集し、日産オートモーティブテクノロジーの強みである
機能間の連携をさらに強めて開発しました。
「お客さまに喜ばれるクルマをつくりたい」という開発担当者の熱い思いと挑戦をご紹介します。

1.軽 EV初の制御開発。
粘り強さで高品質へ 【電子電装設計 × 電動パワートレイン設計 × 内装設計】

日産SAKURAは、軽自動車の概念を覆すEVならではの力強い加速と滑らかな走り、高い静粛性を兼ね備え、コンパクトなボディを維持しながらも通勤や買い物など、日常のドライブに十分な航続距離と広々とした室内空間を確保し、より電気自動車を身近に感じるクルマです。当社にとって日産SAKURAは、DAYZ、ROOXに続く軽自動車開発で、特に関係者が多いe-パワートレインを中心とした部品とその関連部品の品質確保が必要でした。EVシステムは、LEAFをベースに、バッテリー冷却システムの追加やe-Pedalの改良が必要で、車両側とのシステム連携が重要でした。SAKURAのバッテリーは温度が上がりやすく、要素設計者はバッテリー設計者と連携して、外気温と走行パターンを軸にお客さまの使い方を徹底的に検証。性能実験のデータ分析を制御に繰り返しフィードバックしながら開発を進めたことで、氷点下付近まで作動するバッテリー冷却システムと、夏の暑いときも冬の氷点下でも快適な温度にできる空調の両立を実現しています。さらに、ガソリンエンジン車と電気自動車のお客さまの使い方に違いを理解し、お客さまに使い方を提案するなどの工夫を行っています。

2.高級感と上質さを感じる内外装 【外装設計 × デジタルデザイン × 内装設計】

お客さまにSAKURAの高級感と上質さを感じてもらうために、ランプ設計者と品質の専門家である感性品質評価者は密に連携し、開発を進めました。SAKURAの兄弟車であるARIYAを横目に「軽自動車の枠にとらわれない高い品質」を目標とした感性品質評価をした上で、上質に見える合わせやつなぎ目を設計。光っていないときはもちろん、光っているときの光り方にも上質感が求められるランプは、CADやCGなどのデジタル評価を活用し、実際の光り方は部分的なモデルを試作して、関係部署がFace to Faceで知恵を出し合い開発しました。特に、リアコンビランプの「奥行き感のある一文字」は、ランプ内部の部品同士の合わせ方や、線や面の通し方などを細部にまでこだわり高級感のある上質なランプに仕上げています。また内装は、内装設計者とスタジオデザイナーが連携し、エアコンの吹き出し口のわずかな出っ張りを隠したり、上下に動かしたときの軸の見え方を3Dプリンターなどでサンプルを作って検討したり、議論を重ねつくり上げました。関係者全員で即断・即決・即データ化という体制を組み、細かい部分にまでこだわったことで、SAKURAはお客さまに「軽自動車の枠にとらわれない上級車並みの高品質感」を感じていただけるクルマになっています。

3.軽自動車とは思えない走りと
乗り心地を実現 【実験 × 車体設計 × シャシー設計 × 車両計画】

SAKURAの車両計画では日産の軽自動車DAYZでお客さまから好評をいただいている運動性能をさらに向上させることと、ハイトワゴンによる揺すられ感を減らすために、強電バッテリーの最適なレイアウトをはじめとしたアイデアを織込み、高剛性なプラットフォームの開発を目指しました。車体設計者は、どの剛性が本当に必要なのかを理解するために、実験担当者に協力を依頼し、自ら試作車を運転して性能の変化を体感。実車で起きている現象を肌で感じて理解し、確証を得た対策は解析を活用して再評価しました。さらに、電気自動車であるSAKURAはバッテリーの搭載で重量とリアの質量配分が増えるため、挙動が乱れたときの操縦安定性の確保が重要です。シャシー設計者は何度も実車で全体のバランスを考え、サスペンションを検討。そして実験者は、穏やかな動きになるようにバネとスタビライザーの仕様を提案したり、DAYZのような軽快さを実現するために車体剛性を上げたり、サスペンションをもう少し動くようにして試行錯誤を繰り返し、操縦安定性と乗り心地のバランスがとれた魅力あるクルマに仕上げました。こうした機能間の連携による開発が、魅力あるSAKURAにつながっています。

* 掲載情報は取材時のものです。

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