技術力と強みを活かした
新型ROOX
- 新型ROOX 開発秘話 -
技術力に加え、これまでに培ってきた強みを活かして開発した新型ROOX。 そこにはお客さまに喜んでもらえるクルマにすべく、日夜奮闘した開発担当者がいました。
デザイン
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知恵を出し合い実現したスムースなカタチ
DAYZに続き、PQ(感性品質)を担当しました。ROOXのようなスライドドアのクルマには、特有のレールカバーがあります。デザインを崩さずに、複数の隣接した部品とスムースにつながる形状(分割線・隙・面差)をつくることに奮闘し、ようやくOKと言える形にまとめられました。また、三菱自動車と共用する部位の整合取りや開発終盤にリア周りの大幅な形状修正が発生したときは、どうなることかとハラハラした場面もありました。このように数々のシビアな条件下でも、関連部署と一丸となって知恵を出し合い、正確につくり込むことで、自信を持って「良いクルマです!」とお客さまにお勧めできるクルマが完成しました。
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試行錯誤の成果!魅力的なインストルメントパネル
インストルメントパネルのデザインデータを担当しました。ROOXのインテリアデザインの特徴は、インストルメントパネルからドアアッパーがプランビューでつながって見えることです。空間を広く見せるために、キャラクターライン※を描いて面を構築したかったのですが、ROOXのような小さなクルマでは、設計要件もタイトで厳しく、空間を自由に使えないので、デザイナーの意図する面の表情を忠実に再現するのがとても難しく、トライ&エラーの繰り返し。プランビューの微妙な角度をコントロールすることで、魅力的な面を実現しました。試行錯誤をして完成した面の表情を、皆さんもぜひしみじみ感じてください。
※キャラクターライン:クルマの特徴的な線のこと
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設計
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経験を活かして大きく成長したNATとNATV
QCT管理と課題解決を遂行する立場のため、軽自動車 第一弾のDAYZからさらに改善・進化した開発を日産の企画部門や三菱自動車の水島製作所生産から期待され、大きなプレッシャーがありました。DAYZを1年違いで追いかける開発、そして開発者の大半はDAYZも兼務していたため、業務負荷が集中しないよう開発日程を決めて、日々の業務をコントロールしました。一方で、開発者に改善要望をお願いする場面も多く、そのたびにDAYZ開発の経験を通して大きく成長したNATとNATVのメンバーが、迅速かつ実直に対応してくれたおかげで関連部署の期待に十分応えられ、円滑な生産開始を実現することができました。皆さん、ありがとうございました。
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三社の知恵を結集した魅力ある最高のクルマ
競争の激しい軽自動車部門において、お客さまに魅力ある最高の商品を届けるには、幾度もの設計構想の変更や最新アイテムの採用が求められました。開発日程の変更や予算の確保のために、日産の各部門や三菱自動車の本社・岡崎製作所・水島製作所、NMKVへ何度も赴き、Face to Faceで論議を重ねたことも。初めは「できない」と言われたりもしましたが、会社や部門の垣根を越えて知恵を出し合うことで、最善の解決策を見つけて前進することができました。こちらからの難しい要望を受け入れていただいたにも関わらず、「一緒に良いクルマを作っていきましょう!」と言われたときの嬉しさは、明日への自信となりました。
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便利×安全なハンズフリースライドドア
便利で安全なハンズフリースライドドア機能をお客さまに届けるため、使いやすさと誤検知防止を両立させることに挑戦しました。お客さまの使用シーンを関連部署と洗い出し、実車を用いて問題点の特定や使用状況に合わせた修正を繰り返すことで、ベストなレイアウトとセンサー条件の設定ができました。また、三菱ブランドでは初めての機能となるため、三菱自動車の商品企画や販売会社担当の方に直接会ってコミュニケーションを取りながら、販売マニュアルの記載内容等を論議したことが良い経験となりました。皆さんも、ぜひ一度試してみてください!
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日産国内初!ニーエアバッグで乗員を守る
私が担当するニーエアバッグは、クルマが衝突した時に乗員の下肢の動きを抑える働きをします。ROOXの開発では、デジタル開発時から他車のニーエアバッグを分解して構造を調査し、さらに水島製作所の方と実車を使って作業性の確認を行い、構造に織り込みました。また、データ取りをするためのダミー人形をシートに座らせ、試作品のバッグを展開させる先行実験を行って、ダミーの下肢とインストとの間にバッグが入る折り方を検討しました。実物で確認したかいもあって、実車の実験では、狙い通りにダミーの下肢を拘束することができました。普段使いの軽自動車だからこそ、いざというときに乗員を守るため開発してきました。
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新オートライトシステムでお客さまに便利と安心を
皆さんは、夜間にヘッドライトを消灯したまま走行するクルマを見かけたことはありませんか?新型ROOXでは、BCMが制御する新オートライトシステムでヘッドライトを自動点灯し、ライトの付け忘れをサポート。スモールの位置でも作動し、ヘッドライトが自動的に点消灯します。しかし、信号待ちなどで強制的にライトを消したいというお客さまのニーズに対して消灯条件を追加したため、プログラム制御が複雑になり、仕様の検証を何度も行いました。また、出荷前に検査を行うにあたり、水島製作所の方に今回の変更点を理解して確認を行ってもらうため、先行試作車を実際に操作していただきながら、Face to Faceでロジックを説明。正しく理解していただき、便利で安心なクルマができました。
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軽自動車初のインテリジェントFCW開発
軽自動車初の前方衝突予測警報(インテリジェントFCW)は、技術開発の難易度から採用見送りも視野に入れざるを得ない状況でしたが、商品企画部署と協議を重ねる中で、お客さまへ価値を提供したいという強い熱意に感化され、エンジニアのチャレンジ精神に火が付き、開発に挑みました。公道での走行試験(フリート走行試験)実現に向けて、計測器や部材の調達、改造届出申請、検証車であるDAYZの改修作業など、さまざまな壁が立ちはだかりましたが、関係各部のサポートのもと乗り越えられました。試験OK!で終えたときの達成感は忘れられません。これからもチャレンジ精神を忘れず、何事にも取り組んでいきます。
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期待を超えるクルマをつくる
試作車の評価会で、バンパーの奥に見えるコンデンサーの見栄えを改善したいとの意見を受けました。変更は難しい部分でしたが、複数の改善案を練り、デザイン部や実験部、工場、サプライヤーの方々に掛け合ってコンデンサーの塗装を黒色に変更することを決定。また、改善案を実車に採用する際には、現場へ自ら出向き、サプライヤーの設備や水島製作所の生産ラインで実現可能かを直接確認しました。この改善案が成功したのは私一人の力だけではなく、皆さんのご協力の結果に他なりません。これからも、皆さんと一緒にお客さまの期待を超える良いクルマをつくっていきます。
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三菱自動車水島製作所の皆さんと築いた絆
ROOXの開発は、DAYZの際に水島製作所の皆さんと築いた"絆"を再確認できた場でした。ハーネスはクルマ全域に渡る血管のようなものであり、1本でも欠ければ装備した素晴らしい機能を発揮できない部品です。また、思い通りの形状にならない特異な部品で、水島製作所でのダイレクトコミュニケーションやサンプルによるトライ&エラーを繰り返し、時には厳しい条件をお願いしましたが、プロフェッショナルな技術で対応していただきました。この絆のもとで生まれたROOXは、最高のクルマ。DAYZから続く、"回路問題ゼロ"の更新も誇れる成果です。この経験を継承継続し、さらに"絆"を深めていきます。
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「ベトナムは言葉と距離の壁がある」とは言わせない!
ROOXのサスペンションは、NATVが設計を担当しました。特にフィジカルフェーズでは日本とベトナムの距離が課題と考え、すぐに対応ができるよう日本に常駐しました。実際のところ、問題が発生した時に、実車の状況説明を日本語で受けても詳細までは分かり難いときがありますが、今回は自分が実車を確認、理解し、NATVメンバーにベトナム語で説明と検討指示をしたことで、早く正確な対応ができました。今回の件で、NATVのサスペンション設計能力をアピールできたと思います。サスペンション設計と言えば、NATV!と言われるよう、さらに技術を磨いていきます。
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NATの強み"堅実さ"を注ぎ込んだクルマ
われわれの部署ではCAE(Computer Aided Engineering)技術を活用し、クルマの各性能における課題の抽出とその対策検討及び解決を担っています。ROOXの開発では、日産初の軽自動車DAYZでの経験をそのままにせず、一つ一つ丁寧に振り返り、そこで得た知見のすべてをROOXに反映することで、対策フィードバックの品質向上と効率の良い車両開発に貢献することができました。われわれの考え抜いた思いがたくさん詰まった新型ROOX。乗っていただいたお客さま全員が笑顔になってくださることを切に願っております!
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実験
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運転のしやすさと燃費の良さを両立させた日産の軽
DAYZ開発では燃費目標値のハードルが高く、運転のしやすさと燃費の両立に苦労したので、今回のROOXこそは運転のしやすさを優先したいと思い開発に臨みましたが、やはり燃費との両立は厳しく影響が出てしまう結果に。そんな厳しい状況下でも、アクセルの中開度・中回転域を均等に使えるよう変速線を見直し、燃費・排気・運転性のそれぞれで評価・検討を繰り返して、どちらも実現可能になった上に、DAYZから進化させたCVTの変速線を織り込んだことで、一段と運転のしやすいクルマに仕上がりました。今、私はDAYZのオーナーです。さらに良いクルマに進化させるために、小さな改善点も見逃さないよう日々研究に励んでいます。
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万が一を正しくお客さまに伝えるために
皆さんは、エンジンの不調を診断する機能がクルマに装備されていることをご存知ですか?それは、OBD(On Board Diagnosis)というシステムで、エンジンに何らかの異常・故障が発生した時にコンピューターが検知・記憶して、メーター内のエンジンチェックランプを点灯させます。もちろんROOXにも装備されており、正しく異常を知らせるためには車両や部品などのばらつきを十分に把握することが重要であり、水島製作所やテストコースで数多くの試験を行いました。「お客さまが一度もエンジンチェックランプを目にしないこと!」が、私の目指すクルマづくりです。
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新たなチャレンジも確実にストック!
スライドドアの強度実験は、試験機を車内にセットし、ドアを内側から外側に押して評価をします。今まで使用していた試験機は大きく、軽自動車にセットできないことが判明しましたが、事前に試験機を加工することで、遅滞なく実験に着手することができました。また、この実験はあまり頻度がなく経験が少ないことから解析部署とも連携をとって、モーションキャプチャー(人やモノなどの動きを測定してコンピューターに取り込む技法)を活用した測定にチャレンジし、性能向上につながるデータを取得。実験データだけでなく、今後の開発にも関わる実験方法や治具もストックできた貴重な実験となりました。
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開発サポート
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"ミス無し"に向けた新たなチャレンジ
設計のモノづくりはクルマを作り上げること、私たちのモノづくりは国土交通省届出資料をミス無く作ること。ROOXは、DAYZの対策を改良・強化して取り組みました。届出諸元チェック会では、NATVへの適用を拡大しミスを早期に発掘、また三菱自動車の認証課と合同で資料確認会を実施することで届出後の差し替えなく、無事に認可を取得しました。加えて今回、新たな領域へのチャレンジとして、北米安全で運用されている新法規の適合性確認プロセスを初めて採用し、認証開始前に法規適用漏れが無いか、申請とのアンマッチは無いか、など洗い出すことができました。設計の皆さま、本活動へのご協力ありがとうございました。
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* 掲載情報は取材時のものです。
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